PAGE [09]
[花のくちずけ]
去年母が亡くなった。
それは凄く突然で、凄く悲しい事だった。

私達は四人家族で、親二人、十五歳の兄と私で住んでいた。
場所は誰もが憧れるニューヨーク。父の仕事でここに滞在していた。
父の職業はサッカーのコーチ。地元ではとても有名で、自慢の父だった。
母はごく普通の専業主婦で、いつも父を支えていた。
私達兄妹も、普通の学校へ行き、普通の学校生活を送っていた。

悲劇は突然襲った。
たまたま人間ドックで医者を訪れた母に突き付けられた事実。
それは、すいぞうがんだった。
母はずっとピンピンしていたのに何故、と父と私達は思いました。
だが、母は薄々気付いていたのでしょう、何の驚きも見せずに入院した。
不運なまでに、母のすいぞうがんはかなり進行していたみたいで、医者からは余
命半年だと告げられた。

それから私は部活をやめ、毎日病院に通った。
母の大好物の『花のくちずけ』キャンディーを、隣町の日本食品店まで歩いて買
いにいっては、母に届けてあげていた。
母はそのキャンディーを舐めるたんびにポロっと、『幸せだなぁ』と呟いていた。


ある日、私はいつものようにそのキャンディーを母の元に届けにいった。
病室A・205。『また買ってきたよー』と叫んだ先には誰もいなかった。
残されてたのは小さなメモ。
『璃瑠香へ、
マミーが帰ってきたら『花のくちずけ』キャンディー食べるから、そこのテーブ
ルに置いておいてね。マミーより』
その瞬間、悪い予感が胸をよぎった。


それから一年。私達は東京に家をうつした。
今でも私は毎日スーパーに通い、『花のくちずけ』キャンディーを買っては、母
の墓前に届けにいってます。

[前n][次n]


[セ編集]